夢は去勢された飼い猫になることです 飼い主のくれるエサを食べて 飼い主のひざをしっぽでなでて くてくて と、肢体の力をぬいて可愛がられることです 飼い主より先に死にます 近くの堀ばたの桜の下に埋めてもらいます 死の心配はしません 食の心配もしません 衣なんて最上級の毛皮です 宝石もお金も愛も恋もいりません 吸いつくような私の皮膚を撫でるのは 飼い主の満足です 私は少し目を細めて 気持ちいい というような表情をします * 雨音は混乱したままつづいていて いつのまにか壁の時計は三時半を過ぎ 夜のおやつにマカダミア かりり、 実体のある物質を噛み砕くって簡単 心とか 人間とか 私が投げかけた言葉とか 投げかけられた言葉とか 腑に落ちないの『腑』だとか そういうものらを是非ともかじってみたいのに 窓の外を時折り走る車は まだ降り止まぬ雨への苛立ちを運ぶ 雨上がりなんてもう待たない 昼間のおやつもいらない 一番変えたいのは自分 自分です |
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