あいまいな印象・2004

 


夢は去勢された飼い猫になることです
飼い主のくれるエサを食べて
飼い主のひざをしっぽでなでて
くてくて
と、肢体の力をぬいて可愛がられることです
飼い主より先に死にます
近くの堀ばたの桜の下に埋めてもらいます
死の心配はしません
食の心配もしません
衣なんて最上級の毛皮です
宝石もお金も愛も恋もいりません
吸いつくような私の皮膚を撫でるのは
飼い主の満足です
私は少し目を細めて
気持ちいい
というような表情をします

*

雨音は混乱したままつづいていて
いつのまにか壁の時計は三時半を過ぎ
夜のおやつにマカダミア

かりり、

実体のある物質を噛み砕くって簡単

心とか
人間とか
私が投げかけた言葉とか
投げかけられた言葉とか
腑に落ちないの『腑』だとか
そういうものらを是非ともかじってみたいのに

窓の外を時折り走る車は
まだ降り止まぬ雨への苛立ちを運ぶ

雨上がりなんてもう待たない
昼間のおやつもいらない
一番変えたいのは自分
自分です

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